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◎「死亡事故事案」について

突然,交通事故でご家族や大切な方を亡くされた遺族の悲しみは計り知れないものがあります。当事務所がこれまで取り扱った死亡事故案件の中でも,遺族の身体的・精神的な負担の大きさは想像を絶するものがありました。
交通事故は皆様のご家族や大切な方の命を突然奪ってしまうことがありますが,こうした悲しみの中で,ご遺族がご自身で示談交渉等を行うことは,さらに身体的・精神的な負担を重ねることになってしまいます。
また,被害者の方を亡くされた悲しみは,単純に金銭的に評価できるものでないことは言うまでもないことであり,悲しみや怒りが入り混じった中で,ご遺族の方だけで保険会社等に冷静に対応することは非常に困難なものと思われます。
このような悲しみや怒りが入り混じった事態の中で,私ども弁護士ができることは,まずは,遺族にとって「適正・十分」な賠償を実現するよう,最良の弁護活動を行うことに他ならないものと考えております。
残念ながら,死亡事故事案においても,保険会社等による対応は,被害者側にとって,「適正・十分」なものとは言い難いことが少なくありません。
したがって,保険会社から,賠償金額の提示があった段階で,弁護士に相談することが,被害者の方の死亡という事態において,事故後のご遺族の方の負担を軽減する最良の方策であると考えております。

「死亡事故事案」における「損害賠償金」について

 「死亡事故事案」において,被害者側の請求することができる賠償金の内容は次のようなものです。
1, 死亡に至るまでの損害
治療関係費
必要かつ相当な実費全額が認められます。
入院雑費
概ね,1日につき,1500円が認められます。
入院付添費
医師の指示または受傷の程度,被害者の年齢等により必要と認められる範囲で,
職業付添人の部分には,実費全額
近親者付添人の部分には,概ね,1日につき6500円
*ただし,症状の程度,被害者の属性等により増減します。

通院交通費
原則として電車及びバスの料金が認められます。
自家用車を利用した場合には,1キロメートルあたり15円のガソリン代が認められます。
症状などによりタクシー利用が相当とされる場合には,タクシー料金が認められます。
*入院付添のための付添人の通院交通費が認められる場合があります。
2, 葬祭費用
原則として150万円が認められます。ただし,実際に支出した額が,これを下回る場合には,実際に支出した実費が認められます。
3, 死亡による慰謝料
交通事故で被害者が死亡したことによる本人・遺族等の精神的苦痛に対する金銭賠償のことです。
現在においては,訴訟の迅速化と被害者間の公平を図るため,慰謝料の金額についても,定型化・定額化がなされており,概ね下記のとおりの金額となります。
ただし,下記の金額から具体的な斟酌事由により,増減されることになりますので,各事案により,差異が生じることもあります。
一家の支柱 2800万円
母親、配偶者 2400万円
その他 2000万円〜2200万円


なお,慰謝料の増額事由として認められる場合とは,①加害者に故意もしくは重過失がある場合(無免許,ひき逃げ,酒酔い,著しいスピード違反,信号無視,薬物等による危険運転),②加害者に著しく不誠実な態度等がある場合(救護しない,謝罪しない,虚偽ないし不合理な弁解,被害者に対する侮辱等),③被害者の親族が精神疾患に罹患した場合などがあります。
4, 死亡による逸失利益
交通事故で死亡した被害者が,将来にわたって得られたであろう給与所得・事業所得等の収入についての賠償を受けるものです。
死亡による逸失利益は次の計算式により算定することとなります。
▽「基礎収入」×(1-「生活費控除率」)×「就労可能期間の年数に対応する係数」
「基礎収入」
基礎収入は,給与所得者・事業所得者等の有職者の場合には,事故前の年収額をもとに算定し,家事従事者(主夫・主婦)・無職者(学生・高齢者等)の場合には,賃金センサス(平均年収)をもとに算定することになります。
昇給(昇格・ベースアップ)等による収入の増加の蓋然性や再就職の蓋然性,申告外所得の主張・立証をすることにより,各事案ごとに賠償金に差異が生じる可能性があります。
「生活費控除率」
被害者が死亡した場合,存命であれば必要となる生活費の支出を免れることから,生活費相当額を賠償金から控除することとされております。
この生活費控除率は,被害者の所得,生活状況,被扶養者の有無・人数,性別等を勘案し,裁判実務上,概ね下記のとおりであるとされています。 ただし,女子年少者の場合には,その生活費控除率を40~45%とすることも多く,あくまでも各事案の特徴により,差異が生じることになります。
一家の支柱 被扶養者1人の場合 40%
被扶養者2人以上の場合 30%
女性(主婦,独身,幼児等を含む。) 30%
男性(独身,幼児等を含む。) 50%
「就労可能年数」
「就労可能年数」は,原則として,「67歳までの年数」とするものとされています。
もっとも,高齢者の場合,「67歳までの年数」が「平均余命の2分の1」よりも短くなる者については,「平均余命の2分の1」として,算定することになります。
なお,「平均余命」は,厚生労働省の統計情報である「簡易生命表」を使用することになります。
※ライプニッツ係数
逸失利益の損害賠償を請求する場合,本来,将来にわたり発生する利益を前倒しで受け取ることになるので,中間利息を控除することになります。
そして,現在の裁判実務上,原則として,控除すべき中間利息は,年5%のライプニッツ係数で算定されることになります。

「死亡事故事案」における「損害賠償の請求権者」について

1, 相続人
死亡事故案件においては,被害者が死亡しておりますので,基本的に,被害者の「相続人」が損害賠償請求を行うことになります。
「相続人」に該当するのは,下記のとおり,配偶者,子(孫),直系尊属(父母や祖父母等),兄弟姉妹(甥,姪)です。
遺族の方 相続人(相続分)
配偶者と子(孫)がいる場合 配偶者(2分の1),子(孫)(2分の1)
子(孫)がおらず,配偶者と直系尊属(父母,祖父母等)がいる場合 配偶者(3分の2),直系尊属(3分の1)
子(孫),直系尊属がおらず,配偶者と兄弟姉妹(甥,姪)がいる場合 配偶者(4分の3),兄弟姉妹(甥,姪)(4分の1)
配偶者がおらず,子(孫)がいる場合 子(孫)のみ(全て)
配偶者,子(孫)がおらず,直系尊属がいる場合 直系尊属(父母,祖父母等)(全て)
配偶者,子(孫),直系尊属がおらず,兄弟姉妹(甥,姪)がいる場合 兄弟姉妹(甥,姪)(全て)
*被相続人の子が相続の開始以前に死亡している場合に限り,孫が相続人となります。
*兄弟姉妹が相続の開始以前に死亡している場合に限り,その子(甥,姪)が相続人となります。
*子,直系尊属が複数いる場合には,相続分を当該複数人で按分することになります。
2, 近親者
「相続人」とならない「近親者」も,後述の固有の死亡慰謝料に限り,損害賠償請求権を行使することができる場合があります。
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